パリ協定6条2項・6条4項定期アップデート/JCMカンボジア森林ガイドライン

パリ協定6条2項・6条4項定期アップデート/JCMカンボジア森林ガイドライン

株式会社sustainacraftのニュースレターです。

本記事では、2026年2月から2026年3月にかけて発表された主要な炭素関連政策の動向に関し、以下の項目に沿ってお伝えします。

  • 政策動向
    • パリ協定6条2項(二国間協力)
    • パリ協定6条4項(パリ協定クレジットメカニズム(PACM))
    • 各国炭素関連政策
    • 非国家主体のイニシアチブ
    • UNFCCC Registry
  • 考察記事
    • カンボジア・JCM森林ガイドライン採択 ― 新旧ガイドラインの比較から読み解くポイント ―

キーワード: 6条, 二国間協力, PACM, JCM, 森林ガイドライン 

はじめに

今月は、パリ協定6条4項(PACM)の下で初となるカーボンクレジットの発行が国連から承認されたほか、第6条2項ではシンガポールを中心とした二国間協定の締結やプロジェクト募集が一段と活発化しています。また、EUのETS改革議論やICVCMによるラベル基準の厳格化など、コンプライアンス市場とボランタリー市場の双方において「品質」と「経済的実行力」のバランスを問う重要な動きが相次ぎました。

また、後半の考察記事では、3月にJCMカンボジアでJCM森林ガイドライン一式が採択されたことを受けて、新旧ガイドラインを比較することによって、その特徴と、JCM森林分野でガイドラインが標準化されつつあることを解説しています。これによって、他国での展開時の制度予見性がある程度改善し、複数国を対象としたポートフォリオ構築に向けて動くこともこれまで以上に現実的になったと言えると思います。

政策動向

パリ協定6条2項

シンガポールの二国間協定の進展

  • シンガポールとパラグアイは、自然に基づいたソリューションに関する構造化された協力を促進する実施協定に署名しました(出典)。
  • シンガポールとルワンダは、両国間の実施協定の下で新たなプロジェクト申請ラウンドを開設しました(出典)。
  • また、来月にはシンガポールは、タイとの間でも二国間協定に基づくプロジェクト募集を開始する予定です(出典)。

日本のJCMプロジェクト進捗

日本とチリのJCM枠組みにおいて、チリ国内での提案プロジェクト3件に対するパブリックコメントの募集が開始されました。「マウレにおける3.4MWもみ殻発電プロジェクト」(出典)、および「農地を利用した3MW太陽光発電プロジェクト」(出典)が含まれます。

パリ協定6条4項

パリ協定6条4項(PACM)に関しては、国連による初のクレジット発行が承認され、メカニズムの運用が本格的な実施段階へと移行しました。

初のPACMクレジット発行承認

国連は、ミャンマーのクリーン調理プロジェクトに対し、パリ協定下で初となるカーボンクレジット(PACMクレジット)の発行を承認しました(出典)このプロジェクトは、韓国の参加者と連携して韓国排出量取引制度でのクレジット移転も可能となっています(出典)。

CDMからPACMへの移行

UNEPの発表によると、先月ホスト国からの承認を受け、29の活動がCDMからPACMへの移行を認められました(出典)。

また、ドミニカ共和国は、ラテンアメリカおよびカリブ海地域で初めて、PACMに基づいて2つの風力発電所を登録したことを発表しました(出典)。

各国炭素関連政策

各国は炭素排出量削減に向けた多様な政策を推進しました。特にEUではETSの改革を巡る議論が白熱し、新興国での制度導入も進んでいます。

EU ETSの改革と加盟国間の対立

EUの炭素市場では、エネルギーコストの高騰による産業界の負担を懸念し、欧州委員会が排出ベンチマークの緩和や無償割当制度の見直しを検討しています(出典)。ドイツ首相が価格引き下げや制度見直しを示唆したほか、イタリアが制度の一時停止を要請する方針を示したことで、許可証価格が急落しました(出典)。一方で、スウェーデンやフランスなどの同盟国は、新市場(ETS2)の導入延期や価格抑制の過度な介入に反対し、制度の基本構造を維持するよう求めています(出典)。

EUにおける自主的な炭素除去認証とCBAMの動向

欧州委員会は、大気からの直接回収と貯留(DACCS)、バイオエネルギーと炭素回収・貯留(BECCS)、および炭素農業を対象とした、世界初となる自主的な炭素除去認証方法論を採択しました(出典)。一方、CBAMに関しては、ベルギー当局が対象輸入業者の約半数からまだ連絡を受けていないと報告しており、制度の本格移行に向けた実務的な課題が残されています(出典)。

各国の制度構築(英国、マレーシア等)

  • 英国は、残存する石油精製所を炭素許可コストの上昇から保護する計画を発表する一方で(出典)、2028年から国際海運部門へ排出量取引制度を拡大する方針を打ち出しました(出典)。
  • マレーシアは、2026年度予算において鉄鋼・エネルギー部門を対象とした炭素税の導入を決定し、2050年ネットゼロに向けた一歩を踏み出しました(出典))。
  • ケニアでは、東アフリカのクリーンクッキング企業KOKO Networksが、政府からの承認(LoA)を拒否されたことで事業停止を余儀なくされ、炭素市場におけるホスト国の政治的リスクが顕在化しました(出典)。

非国家主体のイニシアチブ

既存のクレジットに対する厳しい選別と、市場のインフラ整備に向けた能力構築が進められました。

ICVCMによる市場の二極化と品質厳格化

ICVCMは、再生可能エネルギー由来の炭素クレジット2.4億件をCCPラベルの対象から除外する決定を下しました。この動きは、炭素クレジットの品質基準を厳格化し、市場をより高品質なクレジットへとシフトさせるための二極化を決定づけるものとして注目されています(出典)。

VCMIとGIZによるアフリカの能力構築

VCMIとGIZは共同で、アフリカにおける検証機関(VVBs)の能力強化に関する報告書を発表しました。アフリカにおけるVVBの不足がプロジェクト遅延やコスト超過の大きな原因(10〜50%)を占めると指摘しており、現地のエコシステムを強化することで、グリーンウォッシュリスクの軽減と地域への経済価値の還元を目指しています(出典)。

各地域におけるボランタリー市場の拡大

サウジアラビアの国家支援を受けた地域ボランタリーカーボン市場(VCM)会社は、北米のプレーヤーと提携を結び、GHG会計やクレジット販売の分野で国際的なフットプリントを拡大しています(出典)。また、韓国政府も気候技術の開発を支援するため、今年末までに自発的なカーボンマーケットを設立する計画を発表しました(出典)。

UNFCCC Registry Updates

2026年2月、合計6件のUNFCCC関連レポートが提出されました。本稿では、JCMパートナー国であるチュニジアの隔年透明性報告書(BTR)ウズベキスタンの6条2項の初期報告書(Initial Report)を紹介します。特にウズベキスタンが初期報告書を提出したことは、JCM案件組成における制度整備の進展を示す重要なマイルストーンです。