Verra草地管理方法論VM0032のメジャーアップデート
株式会社sustainacraftのニュースレターです。
Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事では、今月Verraがパブリックコンサルテーションを行っていた草地管理方法論VM0032のメジャー改訂案(v2.0)について、農地管理方法論VM0042との比較を中心に詳細を解説します。
(出所: Revision to VM0032 Methodology for the Adoption of Sustainable Grasslands through Adjustment of Fire and Grazing, v1.0, 2026年1月26日閲覧)
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はじめに
Verraは、草地管理によるGHG削減・除去プロジェクトを対象とした方法論VM0032 Sustainable Native Grasslands Management through Adjustment of Fire and Grazingのメジャーアップデート(v2.0)のドラフトを公開し、パブリックコンサルテーションを実施しました (2026年1月23日に終了)。
本記事では、VM0032 v2.0ドラフトの主要な変更点を解説するとともに、類似する方法論であるVM0042 Improved Agricultural Land Management v2.2との棲み分けについて詳しく分析します。特に、これまで曖昧だった「草地」の定義がどのように整理され、火入れ(Fire Management)などの活動がどう扱われることになるのか、技術的な詳細に踏み込んで解説します。特に、以下の点を中心に内容をお伝えします。
- VM0032 v2.0で導入される新たな適格性要件とモニタリング手法
- VM0032 v2.0とVM0042 v2.2の適用範囲の違い(土地利用と活動タイプ)
- ベースライン設定や不確実性評価における技術的な厳格化の内容
背景
Verraの農地・草地管理分野の方法論は、急速に進化しています。特にVM0042は、土壌炭素クレジットの主要な方法論として広く利用されており、これまで弊社のニュースレターでも度々取り上げてきました。
VerraのALM・IFM方法論のマイナーアップデートでは、VM0042 v2.2のリリースについて詳しく解説しました。この改訂では、追加性評価へのVT0008ツールの導入、リーケージ評価へのVMD0054の適用、そしてデジタル土壌マッピング(DSM)の限定的な利用許可など、多くの改善が行われました。VM0042は、農地管理全般をカバーする包括的な方法論として位置づけられていますが、その適用範囲の広さゆえに、特定の生態系(特に自然草地やサバンナ)における特有の管理活動(火入れなど)への対応が課題となっていました。
一方、ALM(農地管理)に関する新しい方法論で紹介したように、ALM分野では直接的な測定とモデルを組み合わせた定量化アプローチが主流となってきています。今回のVM0032改訂は、先行してアップデートされたVM0042 v2.2の厳格な基準を、草地管理特化型の方法論にも適用する動きと言えます。
今回のVM0032改訂は、VM0042との重複を排除し、自然草地(Natural Grasslands)に特化した厳密な炭素会計ルールを確立することで、プロジェクトの信頼性を高める狙いがあります。特に、火入れを管理手段として明示的に組み込んでいる点は、他のALM方法論にはない大きな特徴です。
なお、注意すべき点として、今回のパブリックコンサルテーションは、単なる改訂案の提示にとどまらず、VM0032という方法論をそもそも存続させるかも議論のスコープに入っています。つまり、VM0032を独立した方法論として維持しVM0042との棲み分けを明確にする(Option 1)か、あるいはVM0032を廃止し、その適用範囲を包括的な農地管理方法論であるVM0042に統合する(Option 2)かについても、ステークホルダーからのフィードバックを求めています。ですが、本ニュースレターでは、Option 1で進める場合にどのような変更が提案されているのかという観点で内容を紹介していきます。
VM0032 v2.0の主要な変更点と特徴
VM0032 v2.0ドラフトでは、適用条件、活動の定義、定量化手法において大幅な見直しが提案されています。また、データの質と不確実性評価に関して、VM0042 v2.2と同様の高い基準が導入されています。
適用範囲の明確化:自然草地への特化
最も重要な変更点は、対象となる土地の定義が 「自然な(Natural)、不耕起(Untilled)の草地」 に限定されたことです。
- 対象生態系: 低木地(Bushlands)、放牧地(Rangelands)、サバンナ、草地、疎林(Grassy woodlands)。
- 不適格な活動: 耕起(Tillage)、再播種(Re-seeding ※一部例外あり)、窒素肥料の散布。
- 劣化要件の撤廃: 現行版(v1.0)ではプロジェクトエリアが「劣化(Degraded)」していることの証明が必要でしたが、v2.0ではこの要件が削除されました。これにより、劣化が進行していないが適切な管理が必要な土地や、保全活動も対象になりやすくなりました。
適格活動:火入れ管理の統合
VM0032 v2.0は、放牧管理だけでなく 火入れ管理(Fire Management)を主要なプロジェクト活動として位置づけています。