Verraの農地管理方法論VM0042のメジャーアップデート (v3.0)

Verraの農地管理方法論VM0042のメジャーアップデート (v3.0)

株式会社sustainacraftのニュースレターです。

Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事では、Methodology Updatesシリーズとして、Verraがパブリックコンサルテーションを開始したALM方法論VM0042および関連モジュールVMD0053のメジャーアップデートドラフト(v3.0)について、その技術的変更点と影響を詳細に解説します。

(出所: DRAFT VM0042, v.3.0, 2026年2月18日)

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はじめに

今月Verraは、ALM(Agricultural Land Management)に関する主要な方法論であるVM0042と、その生物地球化学モデルの利用に関するモジュールVMD0053のメジャーアップデート(v3.0)ドラフトを公開し、パブリックコンサルテーションを開始しました。今回のアップデートは、農業プロジェクトにおけるベースライン設定の柔軟性を高めつつ、モデル利用時の検証要件を厳格化することで、クレジットの信頼性を向上させることを目的としています。

今回の改定はメジャーアップデートとなるため、変更は多岐にわたります。そのため本記事では、特にプロジェクト開発者や投資家にとって影響の大きいトピックに絞って解説します。具体的には、VM0042におけるグループプロジェクトのベースライン設定累積会計アプローチの導入混合ベースライン(Blended Baseline)の導入、およびVMD0053におけるモデリングワークフローの報告義務化モデル検証テストの追加について詳述します。

これまでの経緯

VM0042は、従来のALM方法論(VM0017など)に代わる、より科学的かつ包括的なアプローチとして登場しました。当社では、これまでのNewsletterでその変遷を追ってきました。

まず、Monthly: Methodology Updates (3月) では、VM0042の登場とVM0017の無効化について解説しました。この記事では、VM0042が最新の科学知見に基づき、土壌炭素貯留(SOC)だけでなく、土壌からのメタン生成や消化管内発酵(家畜のげっぷ)など多岐にわたる排出源をカバーしている点、そしてモデル利用に関してはVMD0053というモジュールを参照し、不確実性評価の詳細な手順を定めている点が特徴として挙げられました。当時から、ALM分野の方法論はVM0042へ集約されていく流れが明確でした。

次に、2024年6月 Methodology Updates (1/n) では、今回のv3.0への布石となる議論を紹介しました。具体的には、木質バイオマスの定量化においてCDM(クリーン開発メカニズム)の方法論への依存を排除し、VCSの最新ARR(植林・再植林)方法論であるVM0047と整合させる計画があることが報じられました。また、サンプリングプロトコルの改善や、グループプロジェクトにおけるインスタンス追加手順の明確化などが検討事項として挙げられており、これらが今回のドラフトに反映されています。

直近では、VerraのALM・IFM方法論のマイナーアップデート にて、v2.2へのマイナーアップデート(デジタル土壌マッピングツールVT0014の利用許可や追加性評価の厳格化など)を分析しました。v2.2では、データの質やモニタリングの効率化に焦点が当てられましたが、今回のv3.0では、ベースライン設定の構造や会計アプローチそのものに踏み込んだ、より根本的なアップデートが提案されています。

業界の現状

農業分野における炭素クレジットは、自然ベースのソリューションの中でも特に拡張性が高いとして注目されています。しかし、農業の現場は気候、土壌、作物、営農方法が複雑に絡み合っており、一律のベースライン設定や正確な排出削減量の定量化が難しいという課題がありました。

特に、作物の輪作(ローテーション)が頻繁に変わる現場でのベースライン設定の難しさや、土壌炭素の長期的な変動をどう評価するかという点は、プロジェクト組成の大きな障壁となっていました。一方で、生物地球化学モデルを用いた定量化においては、モデルのブラックボックス化や過大評価リスクに対する懸念が市場関係者から指摘されており、透明性と検証可能性の向上が急務となっていました。今回のv3.0ドラフトは、これらの課題に対し、柔軟性と厳格性のバランスを取る形での解決策を提示しています。

VM0042 v3.0の変更点

VM0042 v3.0では、プロジェクトの実態に即した柔軟な運用を可能にする一方で、長期的な気候変動緩和効果をより正確に評価するための仕組みが導入されています。
*なお、今回の改定では土壌サンプリング・分析に関するハンドブックも新たに公開するとしていますが、本記事執筆時点ではまだ公開されていないため、以下では触れません。

グループプロジェクトにおける新ガイダンス

グループプロジェクト(Grouped Projects)において、ベースラインシナリオを決定するための要件が明確化されました。これは、複数の農家を束ねてプロジェクトを実施する際に特に重要な変更です。