2026年1月 VCM Updates: Section A
VCM Updates Section A: Voluntary Carbon Creditの市場動向
株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションA(市場動向編)です。
«VCM Updatesの構成»
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 ← 本記事の対象
- クレジット発行・償却・投資動向分析
- プロジェクトパイプライン分析
- 詳細解説セクション
B. 海外の主要規制の動向
はじめに
今月のニュースレターでは、クレジットの発行・償却実績は、2025年12月のデータを扱います。
クレジット発行実績
2025年12月の発行量は前年同期と同様である一方、償却量は前年同期比で減少傾向にあります。ラベル付きクレジットの動向については、CORSIAラベルはラオスおよびガンビアのクックストーブ案件で発行が確認されています。また、Article 6ラベルについては、ラオスおよびガンビアのクックストーブ案件に加え、トーゴの再生可能エネルギー案件で発行が確認されています。Removalラベルは米国のIFM案件のみ、CCPラベルは同米国のIFM案件に加え、ブラジルや中国の廃棄物処理案件、トルコの再生可能エネルギー案件などでも発行されています。
案件パイプライン動向
12月に新たに登録された自然由来案件は57件でしたが、一方でCDR案件はありませんでした。セネガルとインドネシアのARR案件や、ブラジルのREDD案件が含まれています。11月のパイプラインは、先月のニュースレター発行後に更新され、パラグアイのREDD案件など、10案件が追加されました。カーボン市場の観点では、ブラジル、ザンビアとルワンダは特に注目に価し、その理由については後述します。
投資動向
自然再生およびCDR案件への投資は19件確認され、資産運用会社、テクノロジー大手、機関投資家、エネルギー企業など、多様な主体による戦略的な資金流入が見られました。自然再生分野 では、イギリスの投資会社Stafford Capitalによる12億ドルの新たな森林ファンド設立 や、北欧の森林投資ファンド運営会社CapMan Dasosによる森林投資ファンドのクロージングがありました。また、VolkswagenやMicrosoftによる泥炭地再生支援、米国の食品業界大手Kellanovaがインドの小規模農家を支援する再生農業の取り組みを行ったりする動きも見られました。
一方、CDR分野では、Frontierを通じたカナダの廃棄物処理・カーボン除去技術企業NULIFEとの4,420万ドル規模の契約 や、Microsoftとイギリスのグリーンメタノール開発企業C2Xによる12年間にわたる長期除去契約 など、主要なバイヤーによるオフテイク投資が技術革新を後押ししています。バイオ炭(Altitude、Carba)、岩石風化促進法(Lithos Carbon、InPlanet)、海洋CDR(Ebb Carbon、Limenet)、直接空気回収技術(Heirloom) など、投資対象は多角化しポートフォリオ化が進展しました。さらに、第一生命によるCCS特化型社債への投資 やTotalEnergiesによる1億6,700万ドルのブラジルCCS調査投資 は、排出削減インフラの社会実装に向けた金融・エネルギー企業の強力な資本投下を象徴しています。
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向
A-1: クレジット発行・償却・投資動向分析
- 対象レジストリー: VCS(Verra)、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry)、ART-TREES、Puro (Puro.earth), Isometric
- 対象期間: 2025年12月
- 留意事項: 償却した企業について、レジストリーに対して実名での登録は義務付けらておらず、正確性は保証できない旨ご了承ください。また、レジストリーへの反映には遅れがありますので、今後も本対象期間中について案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。2025年第12月の発行・償却実績は以下のとおりです。
- 発行実績:34.34百万(前年同期とほぼ同様)
- 対象期間のクレジット発行数は前年同期とほぼ同水準で、今回も30百万ユニットを下回りました。
- レジストリー別のデータを見てみると、ARTは大きく増加して、全体の4分の1以上を占めました。これは最も高い割合となりました。一方、VCSは大分減少しており、今回は全体の約2割を占めました。
- タイプ別には、ARTの影響によりREDD案件が大幅に増加し、全体の3割以上を占めました。一方、エネルギー(主にGSとVCS)と非CO2ガス(ACRやCARなど)が減少しました。
- 償却実績:15.89百万(前年同期比-43.8%)
- 12月の償却は前年同期比に大きく減少しており、対象期間内で最も低く、20百万ユニットを下回りました。
- レジストリーとプロジェクトタイプの割合を見ると、VCSが全体の大半を占めしていますが、償却量は減少傾向が続いています。また、エネルギーによる償却量が前年同期とほぼ同水準だった一方で、REDDは大幅に減少し、全体の約2割を占めました。

<発行された案件リスト>
以下に表示されているクレジットのラベルは、すべて各認証機関(レジストリー)から提供された情報に基づいています。したがって、以下にご留意ください。
・方法論自体がCORSIA適格(eligible)・CCP認定(approved)であっても、レジストリー側のデータにラベル情報が含まれていない限り、下記の表ではラベル付きのクレジットとしてカウントされません。
・Article 6ラベルの情報を提供しているのは、VCSおよびGSのレジストリーのみです。以下は、2025年12月にクレジットが発行されたプロジェクトの上位10件と、ラベル(Article 6、CCP、CORSIA、Removal)が発行された案件リストです。
発行プロジェクト上位リスト

ラベル発行実績(Article 6)

12月は前月と比べて、プロジェクト数が1件で増えました。ガンビアとラオスのクックストーブ案件、トーゴの再生可能エネルギー案件に対してArticle 6ラベルが発行されています。ラオスからの発行は、12月として最大であるだけでなく、これまでのラオスにおけるArticle 6ラベル付きクレジットの中でも最大の発行量となりました。また、トーゴからの発行は、同国において2年ぶりとなるArticle 6ラベル付きクレジットの発行です。
ラベル発行実績(CCP)

CCPラベルに関しては、12月のプロジェクト数が大幅に増えました。米国とメキシコのIFM、米国、ブラジルと中国の廃棄物処理、米国のオゾン層破壊物質、とトルコの再生可能エネルギー案件に対して発行されています。前月と同様、最も多くの発行量は米国のIFMで、93.3万ユニットでした。また、トルコのプロジェクトは、これまでの再生可能エネルギーにおけるCCPラベル付きクレジットの発行量として最大となる4.38万ユニットが記録しました。
ラベル発行実績(CORSIA)

12月は、前述のArticle 6ラベルが付与されたラオス(VCS-2924)とガンビア(VCS-4000)のクックストーブ案件において、合計約290万ユニットのCORSIAラベルの発行がありました(Phase 1、Vintageは2024〜2026、)。 Phase 1(2024〜2026)では、すべてのVintage(2021〜2026)にLoAが必要となります。今回発行が確認されたクレジットについてLoAが求められるため、ラオスとガンビアは2024年時点でそれぞれLoAが発行済みであることを確認しました。
ラベル発行実績(Removal)

最後に、Removalラベルにつきまして、前月と同様、12月には米国のIFM案件(全てACR)で発行がありました。最も発行量が多かったのは、前述のCCPラベルが付与された案件(ACR-865)で、34万ユニットでした。これまでの累計発行実績を見ると、米国のIFM案件が約9割を占めています。
<償却された案件リスト>
2025年12月に最も多く償却されたトップ10の自然由来プロジェクトの一覧は以下の通りです。

一番償却が大きかったのは、グアテマラのREDD案件(VCS-1622)で、54万ユニットを超える償却が確認されました。次いで、コンゴ民主共和国のREDD案件(VCS-934)では、約45万ユニットを超える償却が確認されました。
<償却企業リスト>
2025年12月に自然由来プロジェクトのクレジットを償却した上位10社は以下の通りです。
最も多くを償却した企業はイギリスのエネルギー・石油化学企業グループであるShellで、その数量は約90万ユニットでした。同社はこれまで、REDDおよび自然再生案件に累計354万ユニットを償却しています。その中には、インドネシアの大規模REDDプロジェクトであるKatingan案件(VCS-1477)やペルのCordillera Azul案件(VCS-985)も含まれています。

<自然由来とCDRプロジェクトへの投資動向>
- 対象案件: 自然由来及びCDRに対する投資を取り上げています。
- 対象期間: 2025年12月
- 留意事項: 「クレジット量(Credits)」や「投資額(Group investment)」については、発表された数字のみを記録しているため、空欄がある場合があります。また、この表でのBeneficiaryとは、投資をした企業やクレジットを購入する側の企業を指し、Investment intoとは、投資対象がプロジェクトなのかファンドなのかを示しています。12月には、自然由来とCDRのプロジェクトへの重要な投資が19件ありました。こちらの内容については、A-3: 詳細解説セクションをご覧ください。

A-2: プロジェクトパイプライン分析
- 対象レジストリー: VCS(Verra)、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry)、ART-TREES、Puro (Puro.earth), Isometric
- 対象案件: 自然由来及びCDRに関するパイプライン
- 対象期間: 2025年10-11月
- 留意事項: レジストリーへの反映には若干タイムラグがあるため、今後本対象期間についても案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。
- 用語: 年間ERとは、年間の排出削減・吸収量(tCO₂e)のことを指します。このセクションでは、自然由来およびCDRに関し、先月の新しいパイプラインプロジェクトおよび、前回のニュースレターで紹介した先々月のパイプラインの更新情報をカバーします。
なお、当データベースにおける申請日(Listing Date)は、レジストリから直接取得したもの、または推定によるものです。そのため、データの網羅性・正確性は保証するものではありませんのでご留意ください。
<自然由来案件パイプライン>
2025年12月のパイプラインには57件のプロジェクトが、11月のパイプラインは先月のニュースレター発行後に更新され、現在は30件のプロジェクトが含まれています。

この2ヶ月を通して、案件数としてはARR案件が一番多くなっています。その多くがVC S(ブラジルやザンビア)とGS(インドやイタリア)などの案件です。
12月のパイプラインには、ARR案件(ザンビア、インド、ブラジル、インドネシア、セネガル、イタリア、アルゼンチン)、REDD案件(ブラジル)、ALM案件(ルワンダ、米国)、とIFM案件(メキシコ、米国)、が含まれています。レジストリーでの情報共有にはタイムラグが生じることがあるため、11月のパイプラインは前月のニュースレターが記載時点からさらに10案件が追加され、パラグアイのREDD案件、インド(2つ)、ガーナ、グアム、フランスと米国のARR案件、 およびミャンマー、タイとロマニアのALM案件が追加されました。
ブラジル、ザンビア、ルワンダで新たなパイプライン案件が出てきていることは、ホスト国の政策面での準備が進み、より新しく信頼性の高い方法論のもとで、実際の供給につながり始めていることを示しています。