ACCU サバンナ火災管理
デロイト トーマツ サステナクラフトのニュースレターの最新号をお届けします。
「Methodology Updates」は、カーボンクレジットや生物多様性クレジットの方法論をカバーするシリーズです。今回は、今年更新されたオーストラリアのカーボンクレジット制度(ACCU)の「サバンナ火災管理(Savanna Fire Management)」方法論を取り上げます。この枠組みは、現在新たに登場しているボランタリーカーボンマーケットの方法論でも広く参照されています。
お問い合わせは、こちらからお願いいたします。
著者: Nick Lau (Applied Scientist)
要約
2026年、オーストラリアはACCUスキームにおけるサバンナ火災管理の枠組みを更新しました。本記事では、「排出回避」と「除去 / 吸収」の両方をクレジット化する、同一の火災管理プロジェクト内における2つのパスウェイに焦点を当てます。これらは、サバンナ火災によるメタン(CH4)および亜酸化窒素(N2O)の排出削減と、生存バイオマスおよび枯死有機物に追加の炭素が貯蔵されることによる大気中からの二酸化炭素(CO2)の除去です。
算定は、初期乾季(Early-season)の野焼きの実施に対して規定の炭素価値を割り当てるのではなく、火災体制(Fire regime)そのものから始まります。プロジェクトのパフォーマンスは20年間の歴史的ベースラインに照らして評価され、植生マップと毎年の火災履歴は「SavCAM」を通じて処理されます。SavCAMは、その基盤となるFullCAM(オーストラリア国家炭素勘定モデル)シミュレーションとプロジェクトエリアごとの年間純排出削減量を算出を自動化するツールです。
吸収パスウェイは特に特徴的であり、モデル化された炭素ストックの増加分がすべて即座に認識されるわけではありません。一部は「吸収量バンク」に保持され、時間の経過とともに段階的に放出されます。また、その後のストックの減少分は次年度以降に繰り越され、永続性のリスクに対しては別途バッファーが設けられています。オーストラリアのサバンナ火災の算定手法は、現在VerraやIsometricで開発中の方法論にも影響を与えていますが、両ボランタリー規格は、より広い地域への適用を考慮し、独自のベースライン、モニタリング、耐久性に関する規則を適用してこの手法を適合させています。
1. ACCU方法論におけるサバンナ火災管理
1.1 ACCUとは?
オーストラリアのカーボンクレジット制度(ACCU:Australian Carbon Credit Unit Scheme)は、同国の主要な国内カーボンクレジットの枠組みであり、クリーンエネルギー規制庁(Clean Energy Regulator)によって運営されています。適格な土地部門、産業部門、その他のプロジェクトは、排出削減または除去されたCO2換算1トンにつき1つのACCUを発行できます。ACCUは取引可能なユニットであり、ボランタリーな償却 / 無効化、オーストラリア政府による炭素削減契約を通じた取得、または規制遵守(コンプライアンス)のための提出に使用できます。
ACCUは、オーストラリアの大規模産業施設向け排出管理枠組みである「セーフガード・メカニズム(Safeguard Mechanism)」を通じて、コンプライアンス需要に直接統合されています。規定の排出ベースラインを超える施設は、法的義務を果たすためにACCUを提出できます。したがって、ACCU市場はボランタリーなプロジェクト開発と、政府調達および産業界のコンプライアンス需要を結びつけています。
なお、当社は、ACCUプロジェクト開発に携わるグローバルなパートナーと協力しており、カーボンプロジェクトの開発、モニタリング、地理空間MRVの経験を有しています。本方法論が貴社の活動に関連する場合や、ACCU市場への参加を検討されている場合は、連携の可能性についてぜひお問い合わせください。
1.2 乾季を通じた火災管理
オーストラリア北部のサバンナでは、乾季の進行に伴い火災の挙動が著しく変化します。乾季の初期に計画される野焼きは、一般的に温度が低く制御しやすいのに対し、乾季後期の火災は植生が乾燥しており、連続した燃料を通じて急速に拡大する可能性があります。戦略的にパッチ状(斑状)の野焼きを行うことで、焼失地と非焼失地のモザイク構造を作り出し、燃料の連続性を断ち切ることで、その後の大規模な野火の拡大を抑制できます。
ACCUの方法論は、これを単なる「初期の野焼き=クレジット化」という単純なルールには還元しません。各プロジェクトエリアで暦年ごとに計画的な野焼きを行うことが求められますが、その量、点火技術、空間パターンは地域の状況に応じて調整可能です。地上および空中からの点火が許可されており、封じ込めや鎮火のために乾季後期の野焼きが使用されることもあります。クレジットの発行量は、ベースラインと比較して、結果として生じる火災排出量と景観内の炭素の変化に依存します。
火災のタイミング、範囲、連続性の変化は、燃焼と植生の両方に影響を与えます。火災の範囲や激しさを抑えることで、火災から放出されるメタンや亜酸化窒素を削減できる一方、バイオマスの枯死率を低下させることで、より多くの炭素を景観内に保持または蓄積させることが可能になります。これらの効果は、2つの別個の炭素算定パスウェイ、すなわち「排出回避」と「炭素吸収(除去)」につながります。
1.3 2つの炭素パスウェイ:排出回避と炭素吸収
排出回避パスウェイは、サバンナ火災によるCH4およびN2Oの削減量を定量化します。吸収パスウェイは、生存バイオマスおよび枯死有機物に追加の炭素が貯蔵された際の大気中からのCO2除去を計上します。どちらも火災管理に起因するものですが、一方は回避された年間の排出フローであり、もう一方は将来の火災、枯死、分解のリスクにさらされ続ける炭素ストックです。
|
パスウェイ |
定量化される内容 |
GHG / 炭素プール |
算定上の取り扱い |
|
排出回避 |
ベースラインと比較したサバンナ火災排出量の削減 |
火災由来のCH4およびN2O |
年間の排出フロー。不確実性バッファーを通じて年次変動を管理 |
|
炭素吸収 |
ベースラインの炭素状態と比較した追加の貯蔵炭素量 |
生存バイオマスおよび枯死有機物に除去されたCO2 |
貯蔵された炭素ストック。段階的な認識、繰り越し、および永続性の処理を適用 |
プロジェクトは、サバンナ火災管理に適応したACCUの追加性要件も満たす必要があります。諸条件の中でも特に、プロジェクトエリアが、排出削減や炭素吸収を主目的とした火災管理を既に法的義務として課せられていないことが求められます。新規プロジェクトのクレジット期間は通常25年であり、吸収プロジェクトは別途25年または100年の永続性期間を選択します。他制度から移行されたプロジェクトには、修正されたクレジット期間ルールが適用される場合があります。
全体の枠組みを踏まえ、以下のセクションでは、火災管理の変化がどのようにクレジット対象となる排出削減・吸収量へと換算されるのかを追いながら、その算定プロセスを形づくる重要な要素に焦点を当てます。具体的には、過去の状況に基づく反実仮想と空間的な算定インプットから始まり、SavCAM/FullCAMによるモデリングの流れ、排出回避と炭素吸収のそれぞれの算定方法を確認した上で、最後にオーストラリアのアプローチが新たなボランタリー市場向け方法論にどのように応用されつつあるかを見ていきます。
2. 歴史的ベースラインと反実仮想
降水量、干ばつ、燃料の蓄積、前シーズンの焼失面積、および操業上の制約はすべて、サバンナ火災に大きな年次変動をもたらします。したがって、プロジェクト開始前の単一の年を反実仮想(カウンターファクチュアル)とすることでは不十分です。新規プロジェクトの場合、ACCU方法論は通常、クレジット期間の直前20暦年をベースラインとして使用します。これは、「火災なし」のシナリオや仮説的な将来の管理計画ではなく、プロジェクトエリア自身の歴史的な火災体制に基づいています。この長いベースライン期間の設定は、1988年まで遡る歴史的な火災跡データの利用が可能になったことで実現した実務的な更新でもあります。
この期間の平均をとることで、例外的に火災が多かった年や少なかった年の影響を抑え、燃焼、燃料蓄積、回復の繰り返しのサイクルを捉えることができます。ただし、ベースラインは固定されるため、プロジェクト期間中のパフォーマンスは、地域の火災状況に応じて変化する同時期の対照区(コントロール)ではなく、歴史的なプロジェクトエリアの状況と比較して評価されます。
同じ20年間のデータを用いて、後の算定で使用される2つの参照量が設定されます。排出回避パスウェイのための「平均年間ベースライン火災排出量」と、吸収パスウェイのための「平均ベースライン炭素ストック」です。プロジェクト実施年の火災排出量は前者の値と比較され、吸収量は後者の値から開始し、その後のモデル化された炭素ストックの時間経過に伴う変化を追跡します。
3. 空間インプットと炭素モデリング
3.1 植生燃料タイプと年間火災履歴
プロジェクトエリアは、規定の高降水量帯または低降水量帯に位置し、適格な植生燃料タイプ(VFT:Vegetation Fuel Types)を含んでいる必要があります。プロジェクト開発者はプロジェクトエリアのVFTマップを作成し、年間の火災履歴データには燃焼が発生した場所を記録します。また、規定の空間的な季節境界により、火災が乾季初期か後期かが分類されます。
VFTは、構造的形成、樹冠の高さ、葉の投影被覆率、優占植生層、草の種類などの属性を用いてサバンナの植生を特徴づけます。割り当てられたクラスによって、適格なピクセルに対して炭素モデルを実行する際に適用される、校正済みの植生および燃料ダイナミクスが決定されます。そのため、VFTマッピングは適格性と定量化の両方に影響を与えます。
火災履歴は、変化する毎年の攪乱パターンを提供します。乾季の初期と後期の境界は、オーストラリア北部全体で単一の固定された日付ではなく、場所と日付によって分類が決まります。したがって、空間的な火災データは、算定ワークフローに渡される火災体制の再構築に直接使用されます。
3.2 SavCAMによる算定ワークフローの自動化
SavCAM(Savanna Carbon Accounting Model)は、データの集約と炭素モデリングを自動化する、プロジェクトレベルで必須の算定ツールです。プロジェクト開発者が必要なプロジェクト情報とVFTマップを提供すると、SavCAMがGIS処理と計算を行い、プロジェクトエリアごとの年間純排出削減量を算出します。単独の炭素モデルを別途使用して結果をインポートするのではなく、SavCAMはこのワークフロー内にFullCAMを統合しています。
