パリ協定6条定期アップデート/韓国・シンガポールとの6条2項比較
デロイト トーマツ サステナクラフト株式会社のニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションB(政策動向編)です。
はじめに
今月のハイライト(考察記事)では、シンガポール・韓国の6条2項アプローチとJCMの比較分析をお届けします。東南アジアの複数の国で、JCMとこの2カ国によるアプローチの重複が見られ、どの国が焦点になるのか、本稿の考察記事で詳しく解説します。
以下の流れに沿ってお伝えします。
- 政策動向
- 海外の主要規制の動向
- パリ協定6条2項(二国間協力)
- パリ協定6条4項(パリ協定クレジットメカニズム)
- 各国炭素関連政策
- 非国家主体のイニシアチブ
- UNFCCC Registry
- 海外の主要規制の動向
- 考察記事
- JCMと韓国・シンガポールの6条2項比較
キーワード: 6条, 二国間協力, PACM, シンガポール, 韓国
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ウェビナーの概要(リンク)
タイトル:SBTi新基準(v2.0)とOERで変わる自然由来(NbS)クレジット活用 〜企業が今おさえるべきポイント〜
日時:2026年9月17日(木) 14:00-15:30
場所:オンライン(Zoom Webinar)
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1. 海外の主要規制の動向
パリ協定第6条2項関連
- ITMO購入制限の提案と環境整合性の議論
- 新たな研究により、環境整合性を維持するために、NDC(国が決定する貢献)の野心度が不十分な売り手国からのITMO購入を禁止すべきとの案が提示されました(出典)。
- これは、緩和成果が過大に評価される「ホットエア」のリスクを排除し、パリ協定の全体的な野心度を損なわないための措置として議論を呼んでいます。
パリ協定第6条4項関連
パリ協定第6条4項(PACM)に関しては、監督機関(Supervisory Body)による制度設計が完了に近づき、旧制度からの移行とホスト国ルールの策定が加速しています。
今月は、以下の準備が具体的な登録・承認アクションへと繋がりました。
- CDMからPACMへのプロジェクト移行
- 30件以上の旧クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトが、第6条4項に基づくパリ協定クレジットメカニズム(PACM)へ正式に移行登録されました(出典)。これにより、京都議定書時代の資産がパリ協定の枠組みへ統合され始めました。
- UAEによるホスト国ルールの公表
各国炭素関連政策
2026年8月、各国は炭素排出量削減に向けた多様な政策を推進しましたが、特にEUの政策を巡る国際的な摩擦と、国内制度の再編が目立ちました。
- CBAMを巡る貿易摩擦の激化
- 駐EU米国大使は、EUのCBAMを「関税の別名(Tariff by Another Name)」と呼び、EUの保護主義的措置を厳しく批判しました(出典)。この発言は、欧州の気候政策が国際貿易協定に影響を与える可能性を示唆しており、今後の米欧関係に緊張をもたらす可能性があります。
- EU ETS(排出量取引制度)の抜本的改革と批判
- 主要各国の政策動向
非国家主体のイニシアチブ
- VCMIによる脆弱国への適応支援新イニシアチブ
- VCMI(ボランタリーカーボン市場十全性イニシアチブ)は、気候変動に脆弱な国々が、炭素市場を活用して適応計画(Adaptation Plans)の資金調達を行うための新イニシアチブを発表しました(出典)。
2. UNFCCC Updates
先月から今月にかけて、UNFCCCレジストリへ提出された報告書は計2件でした。内訳は、隔年透明性報告書(Biennial Transparency Report, BTR)が2件(ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア)となっています。JCMパートナー国からの新規提出はありませんでした。本稿では、北マケドニアのBTRのサマリーを紹介します。
BTR(隔年透明性報告書)
北マケドニア (MKD) - 第1回隔年透明性報告書 (BTR1)
北マケドニアは、2024年末までの提出が求められているBTR1を提出しました。
1. NDC目標と進捗状況
- 目標: 2030年までに総排出量を51%削減(1990年比、FOLU除く)、条件付きで純排出量を82%削減(FOLU含む)という非常に野心的な目標を掲げています。
- 進捗: 2022年時点で総排出量は1990年比12.66%減少。目標達成にはさらなる加速が必要な状況です。
2. 森林・LULUCFセクターの重要性
- 森林セクターは同国の重要な吸収源(2022年実績:-3,085 Gg CO2-eq)ですが、森林火災により「排出源」に転じるリスクを抱えています。
- 主な政策: 統合的森林火災管理、5,000haの植林、バイオ炭の活用などが挙げられています。
3. パリ協定第6条の活用意向
- 自国目標達成のためではなく、「協力的なアプローチを通じた削減成果の移転」の可能性に言及しており、ITMOs(国際的に移転される緩和成果)の創出側に回る意向が見て取れます。
3. 考察記事: JCMと韓国・シンガポールの6条2項比較
はじめに
パリ協定6条2項の下で二国間協力を進める国として、日本のJCMと並んで、シンガポールや韓国の動きが活発になってきています。同じ6条2項であっても、それぞれ独自のアプローチでホスト国に足場を築きつつあり、また対象国によってはJCMと重複する国もあり、JCMクレジット調達を検討する上でシンガポールや韓国の動向が今から気になるところです。
そこで、本稿では、日本・韓国・シンガポールの6条2項アプローチを制度の面から比較レビューし、各国の自然系ITMOs(国際的に移転される緩和効果)調達に向けた動きを整理したいと思います。結論を先取りすると、フィリピン・ラオス・ベトナム・モンゴル・インドネシアで、JCMと他の2国の6条2項アプローチが重複しており、今後のJCMクレジット調達に向けては、幾つか念頭に置いておくべき留意点が見えてきました。
以下、①3カ国の制度比較、②自然系ITMOs獲得に向けた各国の動き、③JCMと競合・共存する可能性のある国々、④まとめの順にお伝えします。