ACR 小規模非工業用私有林向けIFM方法論

ACR 小規模非工業用私有林向けIFM方法論

デロイト トーマツ サステナクラフトのニュースレターの新号をお届けします。

「Methodology Updates」は、カーボンクレジットや生物多様性クレジットの方法論をカバーするシリーズです。本記事では、American Carbon Registry(ACR)の「小規模非工業私有林のための改善された森林管理(IFM)方法論」を検討します。この方法論に基づき、最近、米国南東部の私有林の集約化プロジェクトに対して初めてのクレジットが発行されました。

お問い合わせはこちらからお願いいたします。

著者: Nick Lau (Applied Scientist)

要約

2026年8月27日、American Carbon Registry(ACR)は、「小規模非工業私有林のための改善された森林管理(IFM)」方法論の下で、最初のクレジットを発行しました。今回の発行は、米国南東部の私有林を集約した *LandYield Small Scale IFM Project I* によるものです。レジストリの記録によると、39,153トンのクレジットが発行されており、このACRの方法論が、多数の小規模所有地にわたる伐採延期をどのようにクレジット化するかに注目が集まっています。

小規模な非工業林は、IFMのクレジット化において実用的な課題を抱えています。個々の林分レベルでは、インベントリ、妥当性確認、モニタリングのコストを維持することが困難な場合がありますが、クレジットの発行には登録された土地の炭素量に関する信頼できる推定値が依然として必要です。ACRは、登録と管理のための共通のプロジェクト構造と、定量化を目的としたプロットベースおよび層別化ベースの算定を組み合わせることで、この課題に対処しています。初期蓄積量は、プロジェクトのプロットまたは米国森林局の地域的な森林インベントリ・分析(FIA)プロットのいずれかから推定され、その後、伐採延期シナリオと経済的に実現可能なベースラインの伐採スケジュールの下で、成長・収穫モデルを通じて推計されます。クレジットは、リーケージと不確実性の調整を行った後、それらの軌道の差分から算出されます。

したがって、この方法論は、プロジェクト固有の炭素算定を代替することなく、多数の小規模森林所有者と協力する際の取引コストの一部を削減します。その特徴は、共通の管理体制と地域インベントリのオプションを、モデル化された経済的伐採ベースラインと組み合わせている点にあります。これは、カウンターファクチュアル(反実仮想)を確立するために、プロジェクト外の類似した森林(マッチング)に大きく依存するVerra VM0045やIsometricの小規模所有者向けIFMモジュールなどのアプローチとは異なります。

Improved Forest Management (IFM) on Small Non-Industrial Private Forestlands - ACR
ACR has published version 1.0 of the Methodology for the Quantification, Monitoring, Reporting, and Verification of Greenhouse Gas Emission Reductions and Removals from Improved Forest Management on Small Non-Industrial Private Forestlands.

1. はじめに:ACRの小規模非工業私有林向け方法論

ACRの小規模非工業私有林向け方法論に基づく最初の発行は、この方法論自体を検討するための有用な入り口となります。本記事では、LandYieldプロジェクトの詳細をレビューするのではなく、その背景にある算定枠組み、すなわち、小規模森林所有権がどのように組織化されているか、初期炭素蓄積量がどのように推定されるか、プロジェクトがない場合の伐採ベースラインがどのようにモデル化されるか、そしてクレジット化された炭素が時間の経過とともにどのようにモニタリングされるかに焦点を当てます。最後に他のIFM方法論との比較を行います。

1.1 適用範囲とプロジェクト構造

このACRの方法論は、40-5,000エーカー(16-2,023ヘクタール)の森林を有する米国の非工業私有林に適用されます。クレジット化される活動は伐採延期であり、木材とその炭素を森林内に保持しながら、さらなる成長を蓄積させるものです。所有者は、関連する木材および炭素の権利を保有または管理している必要があり、土地は登録時に法的に伐採可能でなければなりません。

この方法論は、集約化(Aggregation)またはプログラム的開発アプローチ(PDA)に特化しており、複数の適格なサイトを共通のプロジェクト枠組みの下で管理することを可能にしています。参加サイトは、プロジェクト開始日から5年以内に登録する必要があります。炭素算定においては、インベントリ設計、層別化、およびベースライン・モデリングを通じて、実質的に異なる森林の状態を依然として区別します。許可された除去(伐採)は、指定された条件下で引き続き可能であり、その炭素への影響は算定に反映されます。

1.2 追加性とプロジェクト期間

伐採延期は、法律がすでに要求している基準を超えていなければなりません。ACRの慣行ベースのパフォーマンス標準では、適格な所有者に対して、個々の物件ごとの詳細な財務的追加性分析を求めることなく、クレジット期間中の延期を「追加的」なものとして扱います。

初期のクレジット期間は20年間ですが、プロジェクト全体の最低期間は開始日から40年間です。この40年の要件は、MRVおよび蓄積維持のコミットメントです。サイトは、更新されたルールと再評価されたベースラインの下でクレジット期間を更新することができます。更新しない場合はクレジットの獲得が停止し、以前の発行を裏付けるモニタリング対象の一部として残ります。

2. 森林インベントリとベースライン・モデリング

全体の炭素算定枠組みは、主に以下の3つのステップで説明できます。1)プロットによる初期炭素蓄積量の推定、2)マッピングされたプロジェクト面積への推定値の割り当て(層別化)、3)プロジェクト管理下およびプロジェクトなしの伐採スケジュールの下で、成長モデルを用いて森林の変化を予測です。

2.1 初期炭素蓄積量の推定:森林プロットの2つのソース

森林プロットは、炭素推定の根拠となる実測樹木データを提供します。樹種、直径、および関連する属性は炭素蓄積量に変換され、成長モデルを初期化するために使用されます。ACRでは、これらプロットデータを取得するために「プロジェクトレベルのインベントリ」と「地域インベントリ」の2つのルートを認めており、プロジェクト固有の測定と地域的な代表性の間に明確なトレードオフを設けています。

プロジェクトレベルのインベントリでは、登録された境界内に統計的に偏りのないプロットが設置されます。これらの測定値は参加森林を直接サンプリングしたものであり、結果として得られる樹木リストや林分サマリーが成長モデルへの入力データとなります。このルートは初期蓄積に関するプロジェクト固有の証拠を提供しますが、登録エリア全体でのフィールドインベントリ作業が必要となります。

他方、地域インベントリルートでは、米国森林局の森林インベントリ・分析(FIA)プログラムのプロットを使用します。これらのプロットはより広い地域をサンプリングしており、必ずしも登録案件内にあるとは限りませんが、その樹木データはプロジェクト内の比較可能な森林状態を代表するものとなります。全体で少なくとも30のFIAプロット、および各層ごとに4つのプロットが必要です。これにより、小規模所有者のフィールドワークを削減できますが、FIAのサンプルと層別化が登録森林を適切に代表しているかどうかの重要性が高まります。

主な炭素プールは、立木バイオマスと収穫木材製品(HWP)です。枯死木は、選択されたプールの取り扱いによって重要になる場合がありますが、リター(落葉落枝)と土壌有機炭素(SOC)は軽微な変化(de minimis)として除外されます。ベースラインの伐採によって炭素の一部が製品や埋立地に移動するため、収穫木材製品は重要です。立木バイオマスのみでは適切な比較ができません。

2.2 層別化

層別化は、サンプリングされた樹木とプロジェクト面積を結びつける役割を果たします。ACRは、森林タイプ、林齢またはサイズクラス、密度、サイト生産性、管理体制などの特徴を用いて、マッピングされたエリアを層にグループ化します。上述の通り、地域ルートの場合、FIAプロットは、全体で少なくとも30プロット、1層あたり4プロットを含む、偏りのない空間的に明示的な層別化を通じて割り当てられなければなりません。プロジェクトレベルのインベントリでも、森林の状態に十分な差異があり、プールされた推定では精度が低下する場合に層別化が使用されることがあります。

2.3 成長と伐採の予測

次に、同じ初期森林が、異なる管理の仮定の下で将来に向けて推計されます。成長・収穫モデルは、プロットから導き出された林分の状態に、サイトおよび地域のパラメータを加えて、森林の成長、枯死、更新、および伐採をシミュレートします。このステップにより、インベントリは単発の蓄積量推定ではなく、時系列データとなります。

プロジェクトとベースラインの両方の経路で、同じモデルと蓄積方程式が使用されます。これにより成長の仮定が一貫するため、クレジット化される差分は森林管理の違いに由来することになります。ベースラインには経済的に選択された伐採スケジュールが適用され、プロジェクト経路には伐採延期と許可された除去が反映されます。予測された材積またはバイオマスは、各層ごとに炭素およびCO2換算量に変換され、マッピングされた面積全体で加重平均され、モニタリングを通じて更新されます。

モデルはピアレビュー済みで、地域や生態系に適しており、その森林状態に合わせてパラメータ化され、ACRによって承認されている必要があります。事前に承認されたモデルには、米国農務省森林局が開発したForest Vegetation SimulatorやFIBERが含まれます。具体的なモデルは異なる場合がありますが、ディベロッパーは、予測された成長と伐採を精査できるよう、プロット入力、モデルのバリエーション、キャリブレーション(較正)、管理設定、および出力を文書化しなければなりません。

2.4 NPV(正味現在価値)最大化ベースライン

ACRのベースラインは、法的に許容され、地域的に適切な伐採スケジュールであり、100年間にわたる木材生産の正味現在価値(NPV)を最大化することを目指すものです。NPVは、将来予想される木材収入と管理コストを現在価値に変換するもので、モデルは「早めに伐採する」のと「追加の成長を待つ」のどちらがより強い財務的成果を生むかを比較します。森林所有者向けに指定された5%の割引率を用いて、モデルは早期の収益と、林分をより大きく、あるいはより価値のある木材に成長させる価値を天秤にかけます。

実行可能な各スケジュールについて、初期インベントリと成長モデルは、どれだけの商用木材が収穫可能かを推定します。木材製品のグレード別の予想価格が、伐採、再造林、育林、維持、および関連するインフラコストと比較されます。ディベロッパーは、妥当と考えられる一連の仮定を評価し、法的および育林上の制約内でモデル上のNPVが最も高くなる、保守的で財務的に実現可能なスケジュールを選択します。