LIB主要6金属の供給網分析:国・企業別の独占状況
出所: MDPI『Mapping the Supply Chain of Lithium-Ion Battery Metals from Mine to Primary Processing by Country and Corporation』(背景情報)
概要
本レポートは、リチウムイオン電池(LIB)に不可欠な6つの重要鉱物(リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、銅)について、2024年時点の国別・企業別サプライチェーンを詳細にマッピングしたものです。分析の結果、銅やアルミニウムは比較的供給源が多様化している一方、リチウムとコバルトは特定の国と企業に高度に集中していることが明らかになりました。特に、採掘場所に関わらず、精錬・加工工程が中国に圧倒的に集中している「ミッドストリームのボトルネック」が浮き彫りとなっています。
主要ポイント
1. 鉱物ごとの市場集中度の顕著な差
ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)を用いた分析により、コバルト(3214)とリチウム(1241)が高い集中度を示す一方、アルミニウム(312)や銅(457)は競争的で分散された市場構造を持っていることが示されました。ニッケルとマンガンはその中間に位置し、インドネシアやアフリカでの生産拡大に伴い、特定の国への依存度が高まる兆しを見せています。
2. 中国によるミッドストリーム(加工工程)の支配
採掘(アップストリーム)がオーストラリアやチリ、コンゴ民主共和国などで行われていても、その多くは精錬のために中国へ送られます。例えば、リチウムは採掘段階では比較的分散していますが、電池グレードの化学物質への加工段階では中国企業が支配的なシェアを握っており、これがサプライチェーン上の大きな脆弱性となっています。
3. 特定企業による垂直統合と支配力の強化
各鉱物において、少数の多国籍企業が世界供給の大部分をコントロールしています。コバルトではCMOC(中国)が約40%のシェアを占め、ニッケルではインドネシアでの事業拡大を背景に青山集団(Tsingshan)が30%以上のシェアを保持するなど、特定の企業が価格決定や供給安定性に多大な影響力を持つ構造が定着しています。
背景
電気自動車(EV)や蓄電池(BESS)の普及に伴い、LIBの需要は急増しており、原材料となる重要鉱物の安定確保は各国のエネルギー安全保障における最優先事項となっています。しかし、鉱物資源の分布は地質学的に偏っており、さらに精錬インフラの構築には多額の投資と環境対策が必要なため、特定の地域や企業への依存が生じやすい性質があります。本レポートは、政策立案者や研究者がサプライチェーンの脆弱性を特定し、供給源の多様化やリスク回避戦略を策定するための定量的な基準(2024年ベースライン)を提供するために作成されました。
詳細
鉱物別:市場集中度と主要プレイヤー(2024年データ)
| 鉱物 | 世界生産量 | 主要生産国(シェア) | 筆頭企業(市場シェア) | HHI (Global) |
|---|---|---|---|---|
| コバルト | 290 kt | コンゴ民主共和国 (76%) | CMOC (39.37%) | 3214 (高) |
| リチウム | 225 kt | オーストラリア (39%) | Sinomine (17.82%) | 1241 (中) |
| ニッケル | 3,700 kt | インドネシア (59%) | 青山集団 (30.27%) | 1150 (中) |
| マンガン | 21.67 Mt | ガボン (36.5%) | Eramet (31.38%) | 2096 (中) |
| 銅 | 20.29 Mt | ペルー (30.5%) | Volcan (10.99%) | 457 (低) |
| アルミニウム | 72 Mt | 中国 (59.7%) | 中国アルミ (9.86%) | 312 (低) |
サプライチェーンの構造的特徴
- 地理的集中と企業集中の相関:
- コバルトはコンゴ民主共和国(DRC)での採掘が支配的であり、それを中国企業(CMOC等)やグレンコアが運営する形が定着しています。
- ニッケルはインドネシアが世界生産の半分以上を占めるまでに成長しましたが、その多くは中国資本によるHPAL(高圧酸浸出)プラント等の精錬施設と結びついています。
- ミッドストリームの脆弱性:
- リチウムの原材料(スポジュメン精鉱やかん水)は、採掘後に中国へ輸送され、リチウムカーボネートや水酸化リチウムに加工されます。この工程の集中により、中国の政策変更や経済状況が世界中のEV産業に波及するリスクがあります。
- 多様性が維持されている分野:
- 銅とアルミニウムは、採掘から精錬までが世界中に分散しており、特定の国や企業による独占が起こりにくい構造です。ただし、アルミニウムの製錬には安価な電力が不可欠なため、エネルギー価格の影響を強く受けます。
まとめ
本研究は、LIBサプライチェーンにおける「採掘の分散」と「加工の集中」という非対称性を明確に示しました。今後の展望として、コバルトやマンガンについてはリサイクルや代替技術の推進、ニッケルやリチウムについては現在のハブ(中国・東南アジア)以外での精錬能力の拡充が、サプライチェーンの弾力性を高める鍵となります。政策立案者は、単なる採掘拠点の確保だけでなく、精錬・加工工程の多様化に向けた戦略的な投資とパートナーシップ構築が求められます。
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