Verra、非永続性リスク管理のパイロット開始:保険とファンド導入
出所: Verra「VCS Program Durability Pilot to Address Non-permanence Risk: Overview and Application Process」(リンク)
概要
Verraは、VCSプログラムにおける非永続性(リバーサル)リスク管理の新たなアプローチとして、保険およびファンドベースの3年間パイロットプログラムを開始します。この取り組みは、従来のバッファープール制度に代わる多様なリスク管理オプションをプロジェクト開発者に提供し、ボランタリーカーボンマーケット(VCM)の進化に対応することを目的としています。
主要ポイント
1. 新しいリスク管理アプローチの導入
Verraは、従来のバッファープールへのクレジット貢献に加え、保険とファンドベースの2つの代替アプローチを3年間のパイロット期間中にテストします。これにより、プロジェクト開発者は非永続性リスク管理の選択肢を拡大し、プロジェクトの特性に合わせた柔軟な対応が可能になります。
2. 「Innovation」ラベルと市場への影響
代替アプローチを使用するVerified Carbon Units(VCUs)には「Innovation」ラベルが付与されます。これらのVCUは現在のところ、Integrity Council for the Voluntary Carbon Market (ICVCM) Core Carbon Principles (CCP) ラベルやCarbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation (CORSIA) ラベルの対象外ですが、ICVCMは将来的にこのような革新的なアプローチを受け入れる可能性を示唆しています。
3. 厳格な要件とリバーサル対応
パイロット参加プロジェクトは、非永続性リスク評価ツール(NPRT)による厳格なリスク評価基準を満たす必要があります。リバーサルが発生した場合は、代替VCUの償却による是正が義務付けられ、未是正の場合には追加VCUの発行停止やアカウント停止といったVerraプログラムの措置が適用されます。
背景
これまでVerraのVCSプログラムでは、AFOLUやGCSプロジェクトの非永続性リスク(プロジェクトによる炭素貯蔵が将来的に大気中に再放出される可能性)の管理に、プロジェクト開発者からの拠出による一元的なバッファープール方式を採用してきました。しかし近年、VCMの市場参加者からは、保険商品や永続性基金といった、より多様で柔軟なリスク管理メカニズムへの関心が高まっていました。このパイロットは、こうした市場の要請に応え、炭素クレジットの信頼性を維持しつつ、プロジェクト開発者により適したリスク管理手法を提供することで、VCMの持続的な成長と効率化を促進するために立ち上げられました。
詳細
パイロットプログラムの概要
- 期間: 3年間
- 対象アプローチ: 1) 保険、2) ファンドベースのアプローチ
- VCUラベル: 代替アプローチを使用するVCUには「Innovation」ラベルを付与。現時点ではICVCM CCPおよびCORSIAラベルの対象外。
- 背景: VCMにおける非永続性リスク管理の多様化へのニーズに応える。
プロジェクトの適格基準
パイロット参加プロジェクトは、以下の基準を満たす必要があります。
- NPRTの適用: 農業・林業・その他土地利用(AFOLU)または地中貯留(GCS)のNPRT(非永続性リスクツール)を適用。
- リスク閾値:
- AFOLUプロジェクトの総合リスクスコアが60、GCSプロジェクトの総合リスクスコアが7を超えないこと。
- AFOLUプロジェクトの内部リスク合計が35、外部リスク合計が20、自然リスク合計が35を超えないこと。
- AFOLU NPRT v5.0の追加条件:
- プロジェクト期間が最低40年であること。
- 財務的損益分岐点(Payback period)が20年以内であること。
- プロジェクト炭素貯留量の70%に影響する自然リスクの歴史的頻度が10年に1回未満であること。
代替アプローチの最小要件
| アプローチ | 要件の概要 |
|---|---|
| 保険 | - 投資適格格付けを持つ規制された保険会社 - 最低3年間の非永続性リスクカバー - AFOLUまたはGCS NPRTのリスクカテゴリを明確に指定 - Verraからの通知でトリガーされるVCU交換プロセス - 保険期間中に発行されたVCUの総量または価値と同等の最低責任額 - Verraが保険の取得・維持費用に責任を負わないこと - ドキュメントは英語であること |
| ファンドベース | - 投資適格銀行で保有 - VCU発行ごとの手数料を設定し、正当性を提示 - 独立系金融機関による財務能力の証明書 - Verraからの通知でトリガーされるVCU交換プロセス - 資金の不正管理を防ぐガバナンス保護策を開示 - GCSプロジェクトの場合、注入後サイトケア資金と非永続性リスク管理資金を区別 |
| 共通 | - 主要な信用格付け機関(S&P Global, Moody's, Fitchなど)の格付けを使用 |
損失イベントとリバーサル手続き
- 損失発生時: プロジェクト開発者はVerraに報告義務があり、Long-Term Monitoring System (LTMS) も活用される。
- ネットリバーサル確定時: 影響を受けたVCUはVerra Registry上で「reversed」として表示され、全VCU保有者に比例配分される。
- リバーサルの是正:
- 代替VCUの償却により是正される。
- 過去にバッファープールに貢献したプロジェクトは、バッファークレジットと代替VCUの組み合わせで比例的に是正可能(例: 発行済VCU合計1500のうち、プール1000、保険500。250tCO2eのリバーサル発生時、プールから167、保険から83を是正)。
- 未是正の場合: 影響VCUの譲渡、償却、無効化は不可。追加VCUの発行停止。Verraによるアカウント停止措置の可能性。
申請プロセス (Expression of Interest - EOI)
- 提出書類: プロジェクト開発者は1~3ページの関心表明書を提出。
- 記載内容: 参加動機と目標、プロジェクト概要(活動カテゴリと場所を含む)、選択した代替アプローチ、パイロットに含めるビンテージ、過去のバッファー貢献有無、次回の検証予定日。
- 補足資料: 保険証書や金融機関の書類など、選択したアプローチを裏付ける証拠(EOIと同時または後日提出)。
- 受付: Liz Guinessey (eguinessey@verra.org) 宛に継続的に受け付け。
まとめ
このパイロットプログラムは、Verraが非永続性リスク管理における革新的なアプローチを模索し、VCMの成熟度を高める重要な一歩です。多様なリスク管理オプションを提供することで、プロジェクト開発者の参入を促し、市場のニーズに応えながら、炭素クレジットの信頼性と耐久性を一層強化することを目指します。