Isometricの新規稲作メタン削減プロトコル

Isometricの新規稲作メタン削減プロトコル

デロイト トーマツ サステナクラフト株式会社からの新しいニュースレターをお届けします。

「方法論アップデート」は、カーボンクレジットや生物多様性クレジットの方法論をカバーするシリーズです。この記事では、現在パブリックコンサルテーション期間中であるIsometricの最新の「稲作メタン削減(Rice Methane Reduction)」プロトコルを紹介します。

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著者:Nick Lau (Applied Scientist)

概要

Isometricは、間断灌漑(AWD)を通じて稲作からのメタン排出を削減するための新しいプロトコル案を公開しました。AWDは広く研究されている水管理手法であり、すでに複数の既存のカーボンクレジットの方法論にも反映されています。AWDは、水田の湛水状態を定期的に中断させることで、メタン生成の原因となる嫌気性プロセスを抑制し、メタン排出を削減します。

AWDの方法論は、Verra、Gold Standard(GS)、および日本の二国間クレジット制度(JCM)の下ですでに確立されており、全体的な算定アプローチはこれらの枠組み間で概ね一致しています。いずれも湛水状態のベースラインを定義し、排水ベースの介入を導入し、水管理レジームの変化に基づいて排出削減量を推定します。これらの類似性は、稲作システムにおけるメタン動態に関する共通の科学的根拠と理解を反映しています。

Isometricのプロトコルはこの基盤の上に構築されていますが、プロジェクトの実施方法や排出削減量のクレジット化に影響を与える一連の設計上の選択肢を導入しています。これには、ベースライン定義のための圃場レベルの証拠の使用、AWD実施中の水位に関する明示的な条件、および定量化と不確実性に対する構造化されたアプローチが含まれます。また、MRV(測定・報告・検証)の要件は、観察された圃場条件をクレジット発行の結果に直接結びつけるように定義されています。

この記事では、まずAWDの科学的根拠と、それが稲作システムにおける温室効果ガス(GHG)排出にどのように影響するかを概説します。次に、適格性、ベースラインの定義、定量化、およびモニタリング要件を含むIsometricのプロトコルの構成を説明します。最後に、このプロトコルを既存の方法論と比較し、実施においてどこが一致し、どこが異なるのかを明らかにします。

A new protocol for reducing methane emissions from rice farming
Protocol in public consultation until May 7
Rice Methane Reduction v1.0 — Isometric
This protocol outlines the MRV and best practices for reducing methane emissions to the atmosphere by implementing alternative rice cultivation techniques, such as alternate wetting and drying.

1. 間断灌漑(AWD)の科学的根拠

稲は通常、湛水状態で栽培されます。溜まった水は土壌中の酸素を制限し、微生物が嫌気的に有機物を分解してメタンを生成する環境を作り出します。

AWDは、シーズン中の水管理方法を変更します。水田を常に湛水状態に保つ代わりに、定期的に灌漑を停止して水位を低下させ、その後再び注水します。典型的なAWDサイクルには以下が含まれます:

  • 作物の初期成長段階における湛水
  • 水位が徐々に低下する落水期間
  • 地下水位が地表面下5〜15cmに達した時点での再湛水
  • このサイクルをシーズン中に数回繰り返す

この湿潤状態と非湿潤状態の交互の繰り返しにより、土壌環境が変化します。水が引くと、土壌の表層に酸素が入ります。これによりメタン生成微生物が抑制され、土壌中のメタンが分解されるようになります。その結果、正味のメタン排出量が削減されます。

この削減の規模は、現地の状況、特に排水の頻度、土壌タイプ、有機物の投入量、および気候に依存します。残渣のすき込みはメタン生成を増加させる傾向がありますが、排水頻度を高めることで一般に削減量が増加します。様々な研究において、メタン排出量は一般的に30〜70%削減されることが示されています。

2. Isometric AWD プロトコル

2.1 適格性と適用範囲

本プロトコルは、AWD が適用されクレジット発行の対象となる条件を定義しています。これらの要件は、水管理の変化が測定可能で、プロジェクトに起因するものであり、既存の営農体系と一貫していることを確実にすることに焦点を当てています。

プロジェクトは、水位を能動的に制御できる灌漑施設のある低地稲作体系で実施される必要があります。降雨のみに依存する、あるいは制御不能な洪水が発生する圃場は対象外です。対象となる介入には以下が含まれます:

  • 栽培期間中に複数回の落水イベントを導入すること
  • 湛水期間の全体的な短縮
  • 移植栽培から、初期の湛水が不要な直播(ちょくはん)栽培体系への移行

これらの介入は、既存の慣行からの変更を示すものでなければなりません。各圃場は、プロジェクト開始前の5年以内に、対象となるベースラインの水管理レジーム(通常は常時湛水)に従っていたことを証明する必要があります。証拠には、リモートセンシングデータ、圃場記録、または地域の統計情報などが含まれます。

また、プロトコルはプロジェクト下での圃場管理に以下の制限を設けています:

  • 作付け回数を変更してはならない
  • 介入によって収穫量が減少してはならない
  • 新しい品種を導入する場合、追加の管理慣行の変更を必要とするものであってはならない

これらの条件は、生産システムに広範な変更を導入するのではなく、プロジェクトが水管理の効果のみを抽出することを保証するものです。プロジェクトはまた、その慣行が地域ですでに広く普及していないこと、および規制によって義務付けられていないことを証明(追加性の証明)する必要があります。

2.2 ベースラインと層別化

ベースラインは、プロジェクトによる排出量と比較する基準となる条件を表します。本プロトコルでは、これは連続湛水や、該当する場合は単一の排水イベントなど、長期間の冠水を特徴とする灌漑システムに対応します。ベースライン条件は圃場単位で定義され、以下を含みます:

  • 栽培期間中の水管理
  • 作付け前の冠水
  • 有機資材の投入慣行
  • 作付体系(栽培強度)および輪作

プロジェクトエリア全体の変動を考慮するため、圃場は層別化され、類似した特性を持つ層(ストラタ)にグループ化されます。層別化では通常、土壌タイプ、水管理、および管理慣行が考慮されます。その後、各層内で排出量の推定が行われることで、一貫性が向上し、測定のばらつきが抑えられます。