VerraのAWD方法論「VM0051」がCORSIAで承認

VerraのAWD方法論「VM0051」がCORSIAで承認

調査対象: Verra's Rice Methodology Approved under CORSIA(リンク

概要

国際民間航空機関(ICAO)は、Verraの水田管理改善メソドロジー(VM0051)に基づくカーボンクレジットを、国際航空のカーボンオフセット制度であるCORSIAの第1および第2フェーズの適格ユニットとして承認しました。これにより、途上国における水田のメタン排出削減プロジェクトから発行されるクレジットが、航空会社の排出相殺義務の達成に利用可能となります。

JCMへの影響などについての考察は、本ニュースレターの下部をご参照ください。

主要ポイント

1. CORSIA第1および第2フェーズでの承認

ICAOのTAB(技術諮問委員会)の勧告に基づき、Verraのメソドロジー「VM0051」が、CORSIAの第1フェーズ(2024–2026年)および第2フェーズ(2027–2029年)において承認されました。対象となるのは、実質的に開発途上国を指す「REDD+諸国」に所在し、ホスト国政府の必要な承認を得たプロジェクトです。

2. 方法論「VM0051」の革新性

2025年初頭に発表された「VM0051 (Improved Management in Rice Production Systems, v1.0)」は、旧来のCDM(クリーン開発メカニズム)方法論であるAMS-III.AUに代わるものです。AWD(間断灌漑)などの水・作物管理技術を通じてGHG(主にメタン)の排出削減を定量化し、リモートセンシングやdMRV(デジタルMRV)を活用してデータの不確実性を低減させ、追加性の証明を厳格化しています。

3. 年間173万クレジットの供給ポテンシャル

現在、Verraのレジストリには、VM0051を適用するプロジェクトが8件含まれています。これらのプロジェクト開発者(ディベロッパー)による取り組みから、年間で推計173万トンのカーボンクレジットが発行(Issuance)される見込みであり、市場への新たな供給源として期待されています。

ただし、これはVM0051の登録案件全てであり、相当調整に関する要件や、途上国の要件を必ずしも満たしている訳ではないことにご留意ください。

背景・文脈

CORSIAは、国際航空セクターの温室効果ガス排出量を抑制するためのコンプライアンス市場におけるグローバルな制度であり、航空会社は要件を満たす適格なカーボンクレジットを購入・償却(無効化)する必要があります。
水稲栽培は農業セクターにおける主要なメタン排出源です。これまで適用されていた古いCDM(クリーン開発メカニズム)メソドロジーである「AMS-III.AU」は不確実性の問題などからVerraによって無効化されており、新たな質の高い基準が求められていました。Verraが開始した厳格な新メソドロジー「VM0051」がICAOの要件をクリアしたことは、自然由来の解決策(NbS)を通じた排出削減への市場の信頼性を高め、ボランタリーカーボンマーケット(VCM)とコンプライアンス市場の連携を深める重要なマイルストーンとなります。

詳細分析

承認されたメソドロジーおよび適格要件の詳細は以下の通りです。

項目 詳細内容
承認メソドロジー VM0051 (Improved Management in Rice Production Systems, v1.0)
対象スキーム CORSIA 第1フェーズ (2024–2026年)、第2フェーズ (2027–2029年)
対象地域 REDD+諸国(実質的に開発途上国)に位置するプロジェクト
必須要件 ホスト国政府の承認と、パリ協定第6条に基づく相当調整(Corresponding Adjustment)
対象となるGHG 主にメタン
現在の供給ポテンシャル レジストリ上の8プロジェクトから、推定173万クレジット/年

プロジェクトから発行されたクレジットをCORSIA向けに供給するためには、ホスト国によるパリ協定第6条に基づく承認と、二重計上(Double Counting)を防ぐための相当調整が不可欠となります。買い手(バイヤー)である航空会社は、これらの条件を満たしたクレジットを購入することで、自社のコンプライアンス義務を達成できます。

関連動向

Verraは市場統合の波に対応するため、2026年4月上旬に「CORSIAラベル」および「パリ協定第6条ラベル」に関するガイダンス文書を更新し、ステークホルダーがラベル申請をよりスムーズに行えるようプロセスを簡素化しました。近く、今回のVM0051の承認を反映したさらなる改訂も予定されています。
さらに、Verraは4月29日に「PACM, Article 6.2, CORSIA—Oh My!」と題したウェビナーを開催予定であり、VCMとコンプライアンス市場の融合に対する戦略や、パイプラインの審査迅速化に向けた取り組みについて解説します。

まとめ

  • ICAOのTAB(技術諮問委員会)が、Verraの水田メソドロジー(VM0051)をCORSIAの第1・第2フェーズの適格クレジットとして承認した。
  • 対象は途上国のプロジェクトで、ホスト国政府の承認(相当調整)が必須要件となる。
  • メタン排出削減だけでなく、資源利用効率の向上や農家支援など高いコベネフィットを持つ。
  • 現在8つのプロジェクトが登録(レジストレーション)プロセスにあり、年間約173万クレジットの発行が見込まれる。
  • VCMとCORSIA等のコンプライアンス制度の統合が加速しており、Verraもこれに対応するラベルシステムの整備を進めている。

当社の解釈と論点

AWDは、JCMクレジットの供給源としても期待されている活動です。これまでAWDは、CORSIA適格ではなかったために、JCMは相対的に有利な立場となっていました(プロジェクト開発者からすると、JCMを出口とした戦略が合理的であったいう意味です)。
今回、AWDがCORSIA適格となったことにより、プロジェクト開発者にとって、AWDの案件組成にあたっては、JCMとCORSIAの2つの選択肢が生じます。

VM0051は、それまでのCDMベースの方法論から、「ER算定の厳密性」と「現場運用の有用性」の2つの観点で改善がなされたものです。また、別の記事でも紹介しますが、IsometricもAWD方法論のドラフトを最近発表しました。Isometricは、デジタル化を徹底することで、クレジット発行までのリードタイム短縮を強調しています。プロジェクト開発者にとって、JCMが選ばれるメカニズム/方法論であるために、仕組みや運用の改善が今後一層重要となり、当社もそれに貢献していきたいと考えます。

VM0051の詳細については、以下の記事で解説していますので、合わせてご参照ください。
https://www.sustainacraft.com/202503-methodology-updates-1n/

関連情報

当社は、VM0051で利用が認められている、AWD活動でのモデルベースでの排出削減量の算定について、Regrow社及びVM0051の提案者であるATOA Carbon社と、JCMでのモデルベース方法論の構築に向けた検討を進めています(link)。ご関心のあるかたがいらっしゃいましたら、コンタクトフォームよりご連絡いただけますと幸いです。

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