Verraが提案するダイナミックベースラインとランダム化比較試験を用いた森林吸収の強化

Verraが提案するダイナミックベースラインとランダム化比較試験を用いた森林吸収の強化

デロイト トーマツ サステナクラフト株式会社によるニュースレターの最新号です。

「方法論(メソドロジー)アップデート」は、カーボンクレジットや生物多様性クレジットの方法論をカバーするシリーズです。本記事では、現在パブリックコンサルテーション期間中である、Verraの最新の森林吸収強化(Enhanced Forest Sequestration)に関する方法論を紹介します。

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著者:Nick Lau (Applied Scientist)

1. はじめに

Verraは、2026年5月6日から6月8日まで、方法論草案M0274「ランダム化比較試験を用いたダイナミックベースラインによる森林吸収の強化(Enhanced Forest Sequestration with Dynamic Baselines using Randomized Control Trials)」に関するパブリックコンサルテーションを実施しています。M0274は、つる植物(リアナ)の除去、栄養剤の添加、真菌の接種といった局所的な生物学的または森林施業的な処置を施し、森林の炭素蓄積速度を向上させるIFM (改善された森林管理)プロジェクトからカーボンクレジットを創出するための枠組みを提案しています。これは、ほとんどのIFM活動とは異なるカテゴリーに属します。つまり、伐採管理の変更によって将来の炭素損失を回避することでクレジットを創出するのではなく、M0274は既存の森林内での直接的な成長加速を対象としています。

この方法論の算定構造は、ペアプロット(対となる調査区)設計を軸に構築されています。処置を施した森林プロットを、同一プロジェクトエリア内の処置を施していない対照区と比較測定し、さらに外部のベンチマーク森林による別のシステムによって、それら内部の対照区が通常業務(Business-as-usual)の条件を代表し続けているかを妥当性確認します。この設計は、IFMプロジェクトのベースライン構築方法に対する長年の批判や、林分レベルの生物学的処置に特有の「寄与度の証明」という課題に対応したものです。こうした処置による炭素への影響は、広範な管理変更による影響よりも小さく、変動しやすい傾向にあります。本ニュースレターでは、M0274の設計の背景と動機、対象となる活動と適格性条件、ペアプロット算定システムとインテグリティ・ベンチマークの仕組み、そしてM0274とVerraの既存のIFM方法論であるVM0045との関係性について解説します。

Consultation: Methodology for Enhanced Forest Sequestration - Verra
Verra has opened a public consultation on the draft Methodology for Enhanced Forest Sequestration with Dynamic Baselines using Randomized Control Trials (methodology development ID #M0274) in the Verified Carbon Standard (VCS) Program. The consultation will run from May 6 through June 8, 2026.

2. 背景:IFMベースライン算定と最近の進展

IFMプロジェクトによるカーボンクレジットは、観測された森林炭素蓄積量と、プロジェクトがなかった場合に何が起こったかを示す反実仮想ベースラインとの差として計算されます。ボランタリーカーボンマーケット(VCM)の歴史の大部分において、これらのベースラインは、将来の伐採行動、森林成長の軌跡、および木材市場の状況に関する長期予測を通じて構築されてきました。しかし、このアプローチはいくつかの理由で批判を浴びてきました。基礎となるモデリングの選択がしばしば不透明で第三者の検証機関(VVB)による検証が困難であること、プロジェクト開発者が高いベースラインを生み出す仮定を選択するインセンティブがあること、そしてベースラインがプロジェクト開始時に固定されるため、その後の市場状況の変化、土地利用の傾向、または撹乱体制の変化を考慮できないことなどです。

これに対応して、方法論の開発者は長期予測ではなく観測データに依拠するアプローチへと移行しました。VerraのVM0045では、IFMプロジェクト向けにダイナミックな複合ベースラインが導入されました。これは、成長モデルを使用してベースラインを固定するのではなく、k近傍法(k-nearest-neighbor)を用いてプロジェクトエリアにマッチングされた、継続的にモニタリングされている外部の森林インベントリプロットからベースラインを構築し、それら外部森林の変化に合わせて更新するものです。これにより、ベースラインは周囲の景観における観測可能な同時期の森林状況と結び付けられます。

M0274はこの方向性をさらに推し進め、主要な比較対象をプロジェクトの境界内に移動させました。反実仮想を推論するためにプロジェクトエリアを外部の森林とマッチングさせるのではなく、M0274ではプロジェクト自体の内部に未処置の対照区を設置し、処置区と並行してリアルタイムで測定します。このペア構成の内部構造は、処置の効果が局所的であり、微細な空間スケールでの背景にある生態学的な変動から分離する必要がある「吸収強化」活動に特に適しています。これは、広域な外部ベースラインでは対応が困難な課題です。

3. 対象となる活動とプロジェクト要件

M0274は、特定の林分に対して炭素蓄積速度の向上を目的とした生物学的または森林施業的な処置を施すIFMプロジェクトに適用されます。この方法論ではこれらを「吸収強化処置(enhanced sequestration treatments)」と呼んでおり、草案の例には、つる植物(リアナ)の除去、樹冠解放処置、栄養剤の添加、選択的施肥、および真菌の接種が含まれます。これらの処置は個々の樹木を対象とすることもありますが、炭素算定はプロットまたは階層(stratum)レベルで行われます。この方法論では、個々の樹木の結果ではなく、処置されたエリア全体の炭素蓄積量の総変化を測定します。すべての適格なプロジェクトエリアは、クレジット期間を通じて森林であり続けなければなりません。

M0274の下でのプロジェクトは、管理された森林内の定義されたエリアにこれらの処置のいずれかを適用し、そのエリアが同じ期間に同じ森林内の比較可能な未処置エリアよりも多くの炭素を蓄積するかどうかを測定します。両者の差が統計的に有意であれば、それがカーボンクレジット創出の根拠となります。並行して外部モニタリングシステムが作動し、比較対象となる未処置エリアが通常の森林状態を代表し続けていることを検証し、ベースラインの操作を防止します。処置の効果が統計的に実証できない場合、または比較エリアが外部の妥当性確認に不合格となった場合、その期間のクレジットは発行されません。

これを支える算定枠組みは、2つのシステムを中心に構築されています。1つ目は、クレジット計算自体を担う「処置区・対照区のペアプロットシステム」です。プロジェクトエリア内に処置区と未処置区が設置され、同時に測定され、両者の炭素の差が追加性の推定値となります。2つ目は、妥当性確認レイヤーとして機能する「インテグリティ・ベンチマーク(Integrity Benchmark)」です。プロジェクト境界外の外部参照森林をリモートセンシングでモニタリングし、内部の未処置プロットが通常業務(Business-as-usual)の状況を誠実に表していることを保証します。これらのシステムの詳細を説明する前に、以下のセクションでは、プロジェクトが本方法論の対象となるために満たすべき適格性条件、環境セーフガード、および炭素算定の範囲について規定します。

3.1 適格性条件