初のVM0047 ARRクレジット発行

初のVM0047 ARRクレジット発行

デロイト トーマツ サステナクラフト株式会社のニュースレターの最新号をお届けします。

「方法論(メソドロジー)アップデート」は、カーボンクレジットや生物多様性クレジットのメソドロジーを網羅するシリーズです。本記事では、2026年4月に承認された、VerraのARR(植林・再植林・植生回復)専用メソドロジーであるVM0047の下での世界初となるクレジット発行について考察します。この節目となる出来事は、追加性の向上とクレジットの過剰発行リスクの低減を目的として設計された主要機能である、VM0047のダイナミックベースライン・アプローチの初の実装となりました。

VM0047の構造とv1.1で導入された更新内容を取り上げた前回の記事(2025年6月のニュースレター)に基づき、本記事では、パフォーマンスベンチマークの計算、モニタリング手法、および初回発行から得られた主要な知見を詳細に確認しながら、このメソドロジーが実際にどのように運用されたかに焦点を当てます。

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sustainacraft ニュースレター

お問い合わせは、こちらからお願いいたします。

著者:Enes Satir (Carbon Specialist)


ご案内:デロイト トーマツとの共同セミナー開催

先日ご案内した通り、2026年4月1日付をもちまして、当社はデロイト トーマツ グループの一員として新たなスタートを切りました。

デロイト トーマツによる正式リリースはこちらをご覧ください。

6月10日、デロイト トーマツと合同で対面セミナー「データエンジニアリング技術を通じた炭素クレジット調達・企業のサステナビリティ、地政学リスクへの対応」を開催致します。当社代表の末次も登壇致します。皆様のご参加をお待ちしております。

セミナー概要

  • 日時:2026年6月10日(水)14:00〜17:30(日本時間)/ 受付開始:13:30
  • 場所:Deloitte Tohmatsu Innovation Park Room D(新東京ビル)
  • 形式:対面開催

お申し込み

以下のリンクよりお申し込みください。

セミナー申し込みページ

※ご注意 申込多数の場合は抽選とさせていただきますので、予めご了承ください。


1. はじめに

2026年4月21日、VerraはARR(植林・再植林・植生回復)専用メソドロジーであるVM0047の下で、世界初となるカーボンクレジット(VCU)を承認しました。対象となったプロジェクトは、BTG Pactual Timberland Investment Groupが開発した「Brazil Cerrado 1(Verraプロジェクト番号5511)」で、230,120トンのVCUが発行されました。

VM0047は2023年に公開されたVerraのARR専用メソドロジーであり、IC-VCM(ボランタリーカーボンマーケット十全性評議会)のCCP(コアカーボン原則)承認を受けた数少ないメソドロジーの一つです。CCP承認は、ボランタリーカーボンマーケットにおける最高水準の十全性の指標であり、CORSIA(国際航空炭素オフセット及び削減計画)の適格条件でもあります。メソドロジーの構造、v1.1のアップデート、およびCCP承認の詳細については、前回のニュースレターをご参照ください。

本記事では、VM0047のダイナミックベースライン・アプローチ(パフォーマンスベンチマーク)に焦点を当てます。これは、植林された樹木の成長を、修復されていない比較可能な土地(コントロールプロット / 参照エリア)と比較することで、追加的な炭素増加分のみがクレジット化されるようにする仕組みです。

参照: Verra、VM0047 ARRメソドロジーの下で初のクレジットを承認


2. 主要な知見

VM0047の初の実装において、パフォーマンスベンチマーク(PB)は0.166という結果になりました。これは、モニタリング期間中にコントロールプロットで見られた植生の成長が、プロジェクト区画で観察された成長のわずか16.6%であったことを意味します。VM0047の枠組みでは、この部分はベースライン(追加的ではない)成長としてクレジット発行の対象から除外されます。その結果、プロジェクトは測定されたバイオマス増加量の83.4%についてクレジットを受けることになります。この結果は、コントロールプロットにおける自然再生が極めて限定的であったこと、そして観察された炭素吸収の大部分がプロジェクト活動に起因するものであることを示しています。

また、この結果は、VM0047のダイナミックベースライン・アプローチが、プロジェクトによる成長と自然な再生を効果的に区別できることを証明しており、従来の静的ベースライン・アプローチと比較して、より強固な追加性評価を可能にすることを示しています。


3. ダイナミックベースライン(パフォーマンスベンチマーク)の理解

VM0047の最大の特徴は、パフォーマンスベンチマーク(PB)と呼ばれるメカニズムです。このプロジェクトでどのように適用されたかを詳しく見る前に、それが何を測定し、なぜ存在するのかを理解しておきたいと思います。

ここでの「パフォーマンス」とは、植林された樹木の成長、具体的には植林以降にどれだけのバイオマスが蓄積されたかを指します。このベンチマークは、その成長を、修復活動が行われていない近隣の比較可能な土地(コントロールプロット)で起きている状況と比較します。コントロールプロットのレベルを超えた成長分のみが、真のプロジェクトの貢献としてクレジット化されます。

このアプローチは、ARRの炭素会計における長年の課題を解決するために導入されました。旧来のメソドロジー(VM0012など)では、通常「介入がなければバイオマスは成長しない」というゼロの静的ベースラインを前提としていました。しかし、劣化した土地であっても、ある程度は自然に再生する可能性があります。もしプロジェクトが、放置していても生じたであろう植生の成長分までクレジットとして申請してしまえば、それらのクレジットは過大評価されていることになります。VM0047は、反実仮想を単に想定するのではなく、現実世界の状況を測定することでこの課題に対処し、より保守的かつ現実的なベースラインを提示しています。

ベンチマークは検証(ベリフィケーション)のたびに再計算されるため、時間の経過とともに変化する状況に適応します。以下のセクションでは、衛星データによる樹木成長の測定からコントロールプロットの選定、そして最終的なクレジット計算に至るまで、この仕組みが実務でどのように構築・適用されたかを説明します。