Isometricの「農業における強化型風化評価プロトコルv1.2」と炭素除去量の定量化に向けたモデル活用に関する新モジュール

Isometricの「農業における強化型風化評価プロトコルv1.2」と炭素除去量の定量化に向けたモデル活用に関する新モジュール

デロイトトーマツ サステナクラフト株式会社によるニュースレターの最新号をお届けします。

「方法論アップデート」は、炭素クレジットと生物多様性クレジットに関する方法論を取り上げるシリーズです。この記事では、Isometric社の「農業における強化型風化評価プロトコルv1.2」と、炭素除去量の定量化にモデルを活用できる新しい付属モジュールを紹介します。

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著者: Julia Dohner (カーボンスペシャリスト)

はじめに

Isometricは、農業における「風化促進(Enhanced Weathering:EW)」を活用した炭素除去を認証する主要なスタンダードの一つであり、同規格の認証を受けたプロジェクトはすでに商業ベースでの供給を実現しています。2026年4月、Alt Carbon社は商船三井に対し、風化促進によるCO₂除去量として2,500トン分を発行しました。これは、Isometric認証を受けたEWクレジットの供給としては、現時点で最大規模の案件となります。本ニュースレターでは、IsometricのEnhanced Weathering in Agriculture v1.2(以下、プロトコル)について、特に現地での実測値を用いて炭素除去量を定量化する手法に焦点を当てて解説します。また、炭素除去量の定量化において、現地実測を補完するためにモデルをどのように活用できるかを定めた、現在パブリック・コンサルテーション中の新たなモジュールについても取り上げます。

EWは、岩石が化学的風化プロセスを経て、最終的に1万年以上にわたって海洋に炭素を隔離するという自然界の緩やかなプロセスを加速させることを目的とした炭素除去のアプローチです(Kanzaki et al., 2023)。Isometric社のプロトコルでは、EWによる除去量は、土壌または土壌間隙水から得られる化学的測定値を用いて定量化されます。しかし、開放的な農業環境下で生じる自然のプロセスという背景の中で、極めて微弱な風化のシグナルを捉えるには、高い精度と密度の高いサンプリングが不可欠です。同プロトコルはサンプリング配置の手法を規定しており、サンプリング回数を増やすことで不確実性を低減させた場合には、それが評価される仕組みとなっています。

現在、EWにおける除去量の定量化は実測に基づいた手法が主流ですが、現場での実測データをモデルで補完することで、測定コストの削減や事業規模の拡大が可能になる可能性があります。しかし、モデルに関する指針が不十分な場合、除去量が過大評価されたり、クレジットの信頼性が損なわれたりするリスクがあります。Isometricの新しいモジュールは、極めて高い検証基準をモデルに課すことで、こうしたリスクへの対処を試みています。もっとも、Isometric自身も認めている通り、現時点でその基準をクリアできるモデルは存在しないかも知れません。つまり、このモジュールは直ちに利用可能な道筋を示すものではなく、市場が今後目指すべき方向性を示唆するものと言えます。

本記事では、まず二酸化炭素除去アプローチとしての風化促進の科学的根拠を概説します。次に、適格性と適用範囲、システム境界とLCA排出量、正味のCDRと不確実性の取り扱い、MRV(モニタリング・報告・検証)、および永続性/耐久性を含む、Isometricのプロトコルの構造を概説します。その後、新しいモジュールの根拠を説明し、その概要を述べます。最後に、Isometricのアプローチを、風化促進の方法論を持つもう一つの主要スタンダードであるPuro.earthと比較します。